経営者の最も重要な任務の一つに資金調達があります。
会社を経営する上では複数の資金調達法を上手に選択できるよう、日ごろから準備しておくことが大切です。
資金調達方法としての特性を踏まえた適切な選択ができるよう、ぜひ参考になさってください。
ビジネスローンとは?
まずはビジネスローンとはどういうものか、資金調達法としての性質やメリット・デメリットをおさえていきます。
ビジネスローンは事業性融資の性質を持ち、銀行の他にノンバンクも主力商品として提供しています。
<メリット>
①一般的な融資より審査のハードルが低い
金融機関が提供する一般的な融資は貸し倒れを防ぐために厳しい審査に通ることが条件となります。
ビジネスローンはこれに比べて審査のハードルが低く、仮に赤字であったとしても利用可能な場合もあります。
②迅速性がある
一般的な融資では審査等に時間がかかり、融資実行までに月単位の時間がかかります。
これに比べて、ビジネスローンは機動性が求められる事業性の融資であることから、数日から最短即日での融資実行が可能です。
③保証人や担保不要のプランもある
ビジネスローンは各社色々なプランを用意しており、メインとなるのは経営者の信用を基に貸し出す、無担保、第三者保証なしで利用できるプランです。
このプランは、代表者個人の連帯保証があれば他に保証人や担保を用意できなくてもOKです。
<デメリット>
①金利は高め
一般的な融資と比べると金利が高めとなり、各社、各プランにもよりますが概ね年利10%以上の金利となるでしょう。
②借り入れ上限が厳しめ
ビジネスローンは一般的な融資よりも調達可能な金額の上限が狭く、プランにもよりますが数十万円から数百万円、高くても一千万円程度が限度となります。
③信用情報に影響する
ビジネスローンも融資の一種ですので、返済の責任が付いて回る取引です。
そのため信用情報に影響し、返済が遅れたり返済を焦げ付かせると信用が悪化します。
またすでに信用状態が良くない場合、ビジネスローンでも取引を断られることもあります。
ファクタリングとは?
ファクタリングの法的性質は債権の譲渡取引であり、貸し付けや融資などの貸金取引とは根本的な性質を異にします。
融資ではないことから、返済や金利といった概念がありません。
掛け取引を行う商社であれば一定の期日にまとめて支払いを受けていると思いますが、つまりはその期日になれば支払いを受けられる権利=「売掛債権」を保有する形となります。
この権利を譲渡することで、売掛債権の早期現金化が可能になります。
実際の取引形態は二社間ファクタリングと三社間ファクタリングがあり、前者は売掛先の会社に知られずに利用できる反面、手数料が高くなります。
後者は取引先の合意を取って進める方法で、手数料が割安になります。
以下でファクタリングのメリットとデメリットを簡単にまとめます。
<メリット>
①入金が迅速
二社間取引では最短で当日中に、三社間取引でも数日~一週間程度で買取金の交付を受けられます。
②信用情報に影響がない
融資ではないことから、ファクタリングを利用しても自社の信用情報に影響が出ません。
また現状で信用ブラックの状態であっても関係なくファクタリングの利用が可能です。
③担保や保証人は一切不要
融資取引ではないので、ファクタリングでは代表者の個人保証も含め、一切の保証人や担保の用意が不要です。
④オンラインで完結できることも
ファクタリング業者の中には利用者が店舗に出向く必要がないように、オンラインで取引を完結できる仕組みを用意しているところもあります。
⑤使途を限定されない
売掛債権の売却代金は使用用途を制限されることが無いので、自由な利用が可能です。
<デメリット>
①手数料がかかる
二社間取引の場合は債権額の10%~20%程度、三社間取引では3%~5%程度の手数料がかかります。
②債権以上の額は調達できない
受け取れる買取金の額は譲渡する債権の範囲に限られるので、希望する金額を調達できないこともあります。
③債権譲渡登記が必要なことも
迅速性のある二社間取引を希望する場合、ファクタリング業者によっては債権譲渡登記を求められることもあります。
リスクとしては大きくないものの、登記は誰でも閲覧できるので取引先等にファクタリングの利用を知られる可能性があります。
ビジネスローンを優先すべきケースは?
①手数料や金利負担をできるだけ抑えたい
ファクタリングは概ね一か月~二か月程度先の入金を早期に現金化する行為で、これにかかる手数料が仮に20%とした場合、年スパンで考える借り入れの年利に換算すると100%を超えることになります。
性質の違う取引ですから単純比較はできないものの、視点を変えるとこのような見方もできるので金利や手数料で比較するとビジネスローンの方が負担が少ないと見ることができます。
②長期スパンで資金計画を立てたい
資金ショートを避けるような短期の見立てではなく、長期にわたる資金計画を立てる必要のあるビジネス計画には、返済プランを設計できるビジネスローンの方に分があります。
③希望額を調達したい
ファクタリングは売却する債権の額以上の現金化は望めないので希望額を調達できないこともあります。
売掛債権の額以上の資金が必要であれば、ビジネスローンを優先して検討するか、もしくはファクタリングとビジネスローンを併用するなどの工夫が必要です。
④取引先に知られないようにしたい
ファクタリングも二社間取引ならば売掛先に知られる危険はほぼないのですが、債権譲渡登記などから知られる可能性はあります。
また三社間取引では性質上相手先も関与しますから、ファクタリングの事実が売掛先以外の会社にも漏れ伝わる可能性があります。
ビジネスローンはそのような心配がないので、取引先に知られずに資金調達をしたい場合はビジネスローンの方が安心です。
ファクタリングを優先すべきケースは?
次に、ファクタリングを優先して考えるべきケースを見てみましょう。
①目前の資金的危機を迅速に乗り越えたい
資金の計画的な運用ではなく、資金ショートを避けるなど目前の危機を回避したいようなケースにファクタリングは最適です。
迅速性の面ではビジネスローンと同等もしくは若干ファクタリングの方に分があることが多いでしょう。
②信用情報を悪化させたくない時
借り入れでないことからファクタリングをしても自社の信用情報に影響しません。
③赤字がひどい時
ファクタリングでは売掛先の信用があればよく、自社が赤字であっても問題なく利用できます。
④使途を限定されたくない場合
売却代金の使途は限定されないので、個人事業主などは個人的な生活資金などにも使うことができます。
まとめ
本章ではファクタリングとビジネスローンの二つの資金調達法について、メリット・デメリットなどからどちらが有利か見てきました。
貸し金取引であるビジネスローンと債権譲渡取引であるファクタリングは法的にも実務的にも異なる取引です。
根本的な性質が違うので単純比較が難しいため、それぞれの特性を踏まえて使い分ける姿勢を持ちたいものです。
どちらか一つだけではなく、シーンに応じて上手に使い分けていきましょう。