会社には事業を行う上で大切な資源となる「人」が働いています。
経営者が社員のやる気を削いでしまうようなことを口にすると愛社精神が薄れたり、社長個人を敬う心が消えてしまうかもしれません。
また経営者自身にとっても好ましくない影響を及ぼす言葉もあります。
言霊といって言葉には不思議な力があるとされていますので、口にするのを避けるべき言葉やフレーズが存在するのです。
この回では経営者が口にするのを避けるべき言葉をいくつか取り上げて見ていきたいと思います。
Contents
■「責任を取れ!」
仕事で失敗をした部下に「責任を取れ」と迫る例は多くの会社で起きている事実だと思います。
具体的にどのような事態が起きたのかにもよるものの、多くの場合、部下に「責任を取れ」と迫っても会社のためにはならないでしょう。
政治家などが不祥事を起こしたときに辞職するニュースを見聞しますが、これは責任を取っているというよりは責任逃れのようにしか見えません。
ビジネスでは例えば計画が予定通りに進まず会社に損害が生じたような場合、部下に責任を取らせようとしたところで、給料を取り上げるようなことはできません。
事業計画は必ず社長のGOサインの元で進められるはずですから、その判断を下した経営者に最終的な責任があるはずです。
個人の責任を追及するよりも、失敗は失敗として、そこからどうやってリカバーするかを会社として考える姿勢が求められるのではないでしょうか?

■「絶対に間違いのないようにしよう」「慎重にも慎重を期して進めよう」
必要な検討はすべきですし、社の存亡がかかるようなシーンでは慎重さは必要です。
ここではそうした場面ではなく、日常の経営における場面を想定していますが、日常においてもできれば間違いはない方が良いに決まっています。
ここで言っているのは「何も考えずに突き進め」ということではなく、決定のスピードをないがしろにすることは避けた方が良い、ということです。
会社経営においては決定のスピードが遅くなると、市場の変化やライバルの攻勢に対処することが難しくなります。
判断が遅れると結果として会社に大きなダメージを与えてしまうことがあるので、慎重さよりはスピードを意識した決定ができるようにしたいものです。
多くの成功している経営者は「迷ったらまずやってみて、もしダメだったら修正する」というスタンスを持つ人が多いです。
悩むことは決して悪いことではありませんが、悩んだところで結果がすぐ出ないのであれば、多少見切り発車でも進めてみることで良い手がかりを得られることもあります。

■「大きな夢を持たなきゃダメだぞ」
「若者よ、大志を抱け」とは偉人の有名な言葉です。
この意図を否定するものではなく、若者だけでなく誰でも夢を持てる方が人生は豊かになるでしょう。
では会社の中で部下にこの言葉を単に投げかけたとして、それがどれだけ響くでしょうか。
恐らく社員にはむなしく聞こえ、しらけムードが漂うことになるでしょう。
「夢を持て」と言うからには、社長がそれなりの環境を整え、本当に夢を持てる仕組みを提供してやることが大切です。
一つの方法としては、長期スパンの経営計画を立てて、これを社員と共有することが考えられます。
これを聞くと、「社員にとって経営計画なんて響かないよ。彼らは自分の給料以外に興味がないんだから」と思う人もいるでしょう。
確かにただ示すだけでは彼らには響かないかもしれません。
ポイントは経営計画を従業員と経営者とで“深く”共有することです。
例えば「〇年間で売り上げ二倍を達成する」という目標を掲げたとしましょう。
多くの社員は表向きは賛成するかもしれませんが、心の中では「そんなの無理に決まってる。まあ反対してもどうにもならないし、いい顔しとくか」となるでしょう。
しかしここで経営者がインセンティブを提示できればどうでしょう?
「売り上げが二倍になれば給料もかなり増えることが期待できる」「部署増設に伴い役職付きの昇格人事が増える」などの具体的なメリットが示されることで、やっと社員は夢を持つことができるのです。
社員に夢を持たせるには、まず経営者が大きな夢を持つことが先になります。

■「研修で社員の能力幅を広げよう」
社員研修は自社の力を高める原動力になります。
社員研修で意識したいのは、ただやれば良いというのではなく、社員の能力を“確実”に高めることにあると認識しましょう。
そのためには、色々な能力開発を仕掛けるというよりは、一つの能力を確実に自分のモノにできるよう、同じような内容の研修を繰り返し実施する方が効率的です。
テキストなどの教育マテリアルは多くの種類を用いず、できるだけ少なくすることで、受講者は自分がどんな能力を身に着けるべきなのか、期待されていることが理解しやすくなります。
社員の能力開発は幅の広さよりも選択と集中を優先すべきです。

■「人間的な人柄で経営者の良し悪しは決まる」
会社経営をする上では経営者の人間的な魅力は武器になります。
ただ、本当の意味での経営者の良し悪しはそのような捉えどころのないものに依存するのではなく、ビジネスマンとしての経営能力で評価されるべきです。
経営者であれば会社の決算書を見れば社長としての経営能力が分かります。
「会社は傾いているけど、人間としては魅力的だね」と言われて嬉しいでしょうか?
社員も会社を傾かせる社長を尊敬はしないでしょう。
経営者の良し悪しは人柄ではなく経営実績で決まると心得ておきましょう。

■まとめ
本章では経営者が口にするのを避けるべき言葉をいくつか見てきました。
社員のやる気を削ぐものだったり、経営者自身に好ましくない影響を及ぼすものなど色々ありますが、冒頭でお話ししたように言葉には不思議な力があり、口にすると実現しやすくなると言われています。
好ましくない方向に進んでしまうと企業経営に支障をきたすことになりかねないので、敬遠すべき言葉はできるだけ避けるようにしたいものです。