新型コロナによる未曽有の惨禍から数年たった今でも、ウイルスを完全にコントロールするに至ってはいません。
発生当初に比べれば大分研究も進み、経済面もかなり回復してきているとは思います。
しかしながら足元の現状見てみれば、国内企業は惨劇のダメージが色濃く残り、疲弊が続いている企業も多く存在します。
コロナ関連の融資で何とか生き延びた企業も、その返済が始まれば負担が重くのしかかります。
この回ではコロナ関連の融資返済で窮状を訴える企業に向けて、現状でとれる対策について見ていきますので、ぜひ参考になさってください。
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■新型コロナ関連融資の利用状況
帝国データバンクが全国の2万4千社余りに対して行った調査によると、コロナ関連の融資を活用した企業は5割を超えていることが分かっています。
融資の使い道を尋ねる調査では、人件費及び仕入れ関連への支出に利用したという答えが多くなっています。
固定費となる人件費は常に企業の重荷となりますし、仕入れができなければ商売ができなくなるので倒産に直結します。
コロナ関連融資はそうしたところの手当てに重点的に活用されたということですね。
この調査の中では返済の不安についても尋ねる項目があり、約1割の企業が返済に不安を感じていると回答しています。
首の皮一枚でつながったような瀕死の企業は回復力も乏しいので、返済が始まれば相当の負担になると予想します。
次の項からは、コロナ関連融資の返済が難しいと感じた時、どのような対処が考えられるか見ていきます。
■対策その1:据置期間の延長
融資の返済が難しいと感じた時、金融機関に対して相談できるものの一つに「据置期間の延長」があります。
据置期間とは元金の返済を猶予してもらえる期間で、その間は利息の返済のみで済むため返済の負担が大きく減ります。
融資返済が苦しいと判断したら、早めに据置期間の延長を金融機関に相談しましょう。
この対処法の負担軽減効果はそれほど高くない反面、金融機関側に応じてもらいやすいため、早めに相談を始めるのがお勧めです。
コロナ関連融資の据置期間の延長に関しては企業側の要請が強いため、国も金融機関に対して可能な限り延長に応じるように要請を出しています。
金融機関もより応じやすい雰囲気になっていますので、臆せずに相談してください。
■対策その2:リスケジュールの相談
リスケジュールとは、当初に約束した返済に係る条件を見直すことをいいます。
返済が苦しくなった時にそのままにしてしまうと、最終的に返済は焦げ付き、債務者は財産の差し押さえを受けたり、最悪自己破産を検討しなければならなくなります。
金融機関側としてもそれらにかかる手間を避けたいのが本音ですし、自己破産となれば一部の債権を回収できなくなる恐れがあります。
リスケジュールをすることで返済の焦げ付きを防ぐことができ、ゆっくりではあるものの融資した資金の回収が望めるので、誠実な態度で相談すれば金融機関も応じてくれる可能性が高いです。
ただしリスケジュールは債務削減効果が薄く、将来利息のカットや月々の返済額の低減くらいです。
一回の返済負担を減らし長く返済を続けていくイメージで、延命効果を持つものと理解して差し支えありません。
リスケジュールについても、国から金融機関に積極的に応じるように要請がでていますので追い風となります。
■対策その3:中小企業再生支援協議会の利用
リスケジュールについては個別企業が独力で金融機関に相談することもできますが、公的な支援策もあるのでぜひ利用を検討しましょう。
経営に関する公的な支援機関の一つに「中小企業再生支援協議会」があり、これは各都道府県の商工会議所等に設置されています。
各企業が金融機関にリスケジュールをお願いする際、中小企業再生支援協議会が間を取り持ってくれるので相談がしやすくなると同時に、より有利なリスケを実現させやすくなります。
また同じく各都道府県の商工会議所等に、別組織として「中小企業活性化協議会」というものもあります。
次の項では中小企業活性化協議会が取り扱う支援策について見ていきます。
■中小企業活性化協議会の支援を受ける
中小企業活性化協議会は各地の商工会議所に設置されており、中小企業活性化協議会自身が直接行う支援内容もあれば、国が認定した民間の専門家(民間プレーヤーと呼ばれる)が行う支援内容もあります。
両者の支援内容をそれぞれ簡単に見ていきます。
1:中小企業活性化協議会自身が行う支援内容
①収益力改善支援
中小企業を対象に収益力改善アクションプランの策定を実施するものです。
②プレ再生支援・再生支援
収益性はあるものの財務上の問題がある中小企業を対象に、事業面、財務面の改善を図る再生支援を実施するものです。
③再チャレンジ支援
収益力の改善や事業再生等が困難な中小企業や、保証債務に悩む経営者等を対象に、再チャレンジに向けた支援を実施するものです。
2:民間プレーヤーを活用した支援
①早期経営改善計画策定支援(ポストコロナ持続的発展計画事業)
国が認定した専門家の支援を受け、資金計画やビジネスモデル、アクションプランなどの経営改善計画を策定する場合に、その費用の三分の二を補助してもらえます。
②経営改善計画策定支援
国が認定した専門家の支援を受け、金融支援を伴う本格的な経営改善計画を策定する場合に、支援に要する費用の三分の二を補助してもらえます。
以上、簡単ですが中小企業活性化協議会の支援内容を見てきました。
収益が思うように上がらず債務の返済が苦しい時は、根本的な改善を求めていかなければいずれ倒産の危機を迎えます。
専門的な経営改善の支援を受けられるので、ぜひこうした公的な支援策を活用しながら道筋を立てられるようにしましょう。
■対策その4:税・社会保険・公共料金の猶予
公的な支援策を十分活用すると同時に、目の前の余計な出費を抑える努力も必要です。
金融機関への債務弁済とは別方面の出費も状況次第で削減することができます。
代表的なものに税金や社会保険料、公共料金があります。
会社の経営が苦しい時は税務署に相談することで税金の納税を一定期間猶予してもらうことができますし、社会保険料も猶予制度があるので年金事務所に相談してみましょう。
電気・ガス・水道などの公共料金も同様で、各事業者に対し相談することができます。
これらは全て相談相手が異なるので対応が手間に感じると思いますが、うまくすればかなりまとまった額の出費を抑えることができるのでかなり楽になります。
■目の前の資金需要にはビジネスローンで対応
出費を抑えるだけでは目の前の支払いに窮することになり、資金ショートが起きればダイレクトに倒産につながります。
目下必要な支払いに要する資金の確保は、利用しやすいビジネスローンで対処するのがお勧めです。
経営状態が苦しいと銀行は途端にそっぽを向きますから役に立ちません。
苦しい場面でもノンバンクのビジネスローンならば柔軟な対応が可能です。
第三者保証や担保が不要で利用できる信用貸しプランでも数十万円~300万円程度までの融通が利くので、日常の小口資金の確保に使うことができます。
もし不動産などの担保を用意できれば数千万円程度の融資を受けることも可能です。
不動産がなくても、車や工場機械などの動産を担保に利用できるプランもあります。
売掛債権などの流動資産を担保に利用できるプランもあるので、活用できる資産を動員して資金確保できないか相談してみましょう。
どういったプランが用意されているかはビジネスローン事業者によって様々ですが、上で見た不動産担保プラン、動産担保プラン、債権担保プランはほとんどのビジネスローン事業者が用意しています。
目の前の資金需要にはビジネスローンで対処しつつ、根本的な経営改善は公的機関の支援を受けて基礎の立て直しを図るようにしてください。
■まとめ
本章ではコロナ関連の融資返済が苦しくなった時にとれる対応策について見てきました。
直接的に金融機関に働きかけて返済プランを練り直すこともでき、独力で難しい場合は公的な支援を受けて進めることもできます。
公的支援では返済だけでなく基幹となる経営全般の支援を受けることもできるので、ぜひ利用しましょう。
目先の支払いに窮するようであれば柔軟に利用できるビジネスローンを活用して資金を確保することもできます。
複数の対処法を同時に実践すればかなりの効果が期待できるので、手間はかかると思いますが頑張って実践していきましょう。