現金が足りないときには金融機関から融資を受けて資金を調達できますが、個人による借り入れと事業性のある借り入れでは、融資の内容や条件などが全く変わってきます。
事業性のある借り入れの場合、融資額はもちろんですが迅速性などの使い勝手も個人客とは事情が異なるので、事業性のある事案にはビジネスローンという融資商品が用意されています。
ビジネスローンは大きく銀行が扱うものと、銀行以外の機関が扱うものがあり、銀行以外の機関が扱う商品はノンバンクのビジネスローンというくくりで扱われます。
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ビジネスローンとは
まずはビジネスローンという商品がどのようなものなのか押さえましょう。
ビジネスという名前から事業性のあるローンであることは大体察しが付くと思いますが、生活資金などを借り受ける個人客ではなく、事業に用いる資金を必要とする人や法人に貸し付けを行うのがビジネスローンです。
そして、「ローン」というと住宅ローンやマイカーローンが頭に浮かぶかもしれませんが、ビジネスローンは個別の商品ごとに中身の性質が異なります。
ビジネスローンを性質ごとにわけると、住宅ローンやマイカーローンと同じようなイメージで、一括して資金を借り受け、以後は返済を繰り返していくものと、主に小口の資金を借りては返すような性質のものもあります。
中には、担保を提供する代わりに大きな金額を借り受けたいという要望に応えるために、有担保ローンの商品もあります。
不動産担保ローンなどが有担保ローンに該当し、担保に提供できる不動産があれば、比較的大口の融資を受けることが可能になります。
ビジネスローンの返済方法について
ビジネスローンの返済方法にはいくつかの種類があります。
①一括返済
指定日に、借り受けた元本と利息をまとめて一括返済する方法です。
一度きりのまとまった借り受けに対して、まとめて返済するシンプルな方法です。
②元利均等返済
元本と利息を合計したうえで均等に分割し、毎月決まった額を返済していく方法です。
返済金額が決まっているため、返済予定を立てやすいのがメリットです。
③残高スライドリボルビング返済
毎月決まった金額を返済していく方法を「リボルビング払い」といいますが、毎月の残高によってその額がスライドするのがこの方式です。
借入残高に応じた返済額をあらかじめ決めておき、その額の増減によって返済額も増減する仕組みです。
残高が減ると返済額も減りますが、残高が多いほど返済額も大きくなるので、途中で借り入れを追加した場合は返済額が大きくなります。
④元本一括返済
毎月の返済は利息分のみにして、元本部分は後日まとめて返済する方法です。
借入期間に余裕を持たせることができるので、返済日までの余裕を保ちたい場合に有効です。
最終的な返済総額は他の返済方法よりも大きくなります。
銀行系とノンバンクのビジネスローンの違い
ビジネスローン商品を扱う金融機関は、銀行の他に消費者金融やクレジットカード会社、信販会社など色々あります。
違い①:審査の厳しさ
まず審査の厳しさについては、銀行の方が厳しく、ノンバンクの方が緩めになります。
審査の厳しさは審査スピードにも大きく影響し、銀行では審査に数週間から1か月以上かかることもあります。
実際には入金がなされるまでには数日程度の余裕を見ておくべきですが、銀行と比べればかなりの差が出ます。
違い②:金利
また金利に関しては銀行の方が低めで、ノンバンクの方が高くなります。
ノンバンクはリスクを背負ってでも迅速性を売りにするため、審査を緩くしなければなりません。
そこで、多数いる借り手全てに高めの金利を設定することで、誰か一人に貸し倒れが生じても、全体としての利益を守るというスタンスを取っています。
イメージとしては保険商品に近く、例えば火災保険であれば、多数から保険料をとることで、その中のどこか一軒に火事が生じ保険金を支払っても、全体の保険料収入で保険会社の利益が守られます。
ノンバンクも全体的に金利を高くすることで、万が一貸し倒れが起きても、取引全体の利益によってカバーするという姿勢です。
審査に必要になる書類等も、迅速性を売りにするノンバンクは少なめで、しっかり審査する銀行は多数の資料の用意を求められます。
ノンバンクは審査が早い
ノンバンクは利便性を高めるために迅速性を売りにするものの、いい加減な審査をしていてはいかに高金利でリスクを分散したとしてもカバーできません。
融資の焦げ付きが頻発し事業として成り立たなくなるでしょう。
銀行の審査では、提出された書類を人の目で細かくチェックして融資が焦げ付かないか、しっかりと返済がなされるかを確認します。
まず担当者がチェックし、その上司のチェックが入り、決済担当の上役のチェックを経るまでに長い時間がかかります。
ノンバンクのスコアリングは、決算書などの数値を自動で評価し点数化するものです。
何点以上なら合格(融資可)、何点以下なら不合格(融資見送り)というように、学校のテストのように単純化された評価ができるので、時間がかからず、迅速な審査を可能にしています。
ただし、ケースによっては込み入った事情が絡んでくることもありますから、全てのケースでスコアリングだけで評価するわけではありません。
「この顧客はしっかりと返済してくれるだろうか?」と疑問符が付けば、審査が厳しくなることもあります。
ノンバンク系ビジネスローンのメリット
銀行に比べて迅速性があり、必要書類の準備などに時間をかけなくてもよいというメリットがあるので、ノンバンク系のビジネスローンは資金調達に時間をかけられないケースで優位性を発揮します。
小回りを利かせて展開する中小企業のビジネスでは、多くの会社との多重取引の中で資金ショートの心配が出るシーンがよくあります。
そして金利に関しても、短期的な借り入れの場合はそれほど問題にならないことが多いです。
常態的に借り入れを繰り返すような場合は別ですが、ピンチを脱するための緊急避難的な場面で借り入れ、すぐに返せるあてがある場合、短期取引となるので金利の負担はそれほど大きくなりません。
取引先からの入金などが近い将来にあり、すぐに返せるのであれば、ノンバンクの高金利も実はあまり問題にならないのです。
ビジネスローン利用時のデメリット
資金調達を考える必要性があるということは、資金ショートの懸念など余裕がなくなっている状態です。
「もしA社の審査に落ちたら」と考えて、B社C社と重複して申し込みをしてしまうケースがあります。
多重申し込みは危険な行為でお勧めできません。
まず一つに、多重申し込みはローンの審査に通りにくくしてしまう可能性があります。
ローンの申し込みをすると、当事者の情報は信用情報機関に登録されます。
各金融機関はそれぞれ利用者の信用を確認することになるので、近接した時期に多数のローンの申し込みをしている事実が分かると、信用に疑問符が付いて審査に通りにくくなる可能性があります。
二つ目に、仮に複数のビジネスローンの審査に通り利用できたとしても、その情報はやはり信用情報機関に登録されます。
倒産の危機に瀕しているようなのっぴきならない事情があるならば別ですが、そこまでの危機でないならば、最初に申し込みをした金融機関の審査がされている間に、次の金融機関への申し込み書類を整えておくなど、申し込みの準備に止めておくことをお勧めします。
ビジネスローンは総量規制の対象外
ところで、個人による借り入れには総量規制が働くため、収入に比して過大な借り入れができない仕組みになっています。
この点を心配される方がいますが、総量規制は個人が対象で、法人対象のビジネスローンは対象外となっているので心配要りません。
では個人事業主はどうかというと、この場合は個人であっても事業性のある場合は例外扱いとなるので、やはり総量規制の対象にはならない仕組みになっています。
ビジネスローンとファクタリングの比較
近年注目が高まっている資金調達法に「ファクタリング」がありますが、ビジネスローンと比較したときにどちらを選択すればいいのか迷うかもしれません。
基本的には、ビジネスローンが利用できるのであれば、こちらを優先した方がお得です。
ファクタリングの手数料と比した時には、ビジネスローンの金利方がお得になることが多いからです。
ファクタリングは債権の譲渡取引なので信用情報機関に登録されることはありません。
また赤字決算や税金滞納などでビジネスローンが利用できない場合もファクタリングが有効ですので、選択肢に入ってくるでしょう。
まとめ
本章ではノンバンクのビジネスローンとはどういうものか、銀行系との違いや審査の仕組みなどについて全体的に見てきました。
数ある資金調達法の中では比較的利用しやすい部類に入り、迅速性や手軽さを意識したローン商品となっています。
担保や保証人なしで利用できる商品だけでなく、有担保で大きな額を借りられる商品もあるので、事情に応じた商品を選択する自由性もあります。
総量規制の対象とはならないものの、きちんと返済できるかどうかについては自社、自身の責任でしっかり検討する必要があります。
ビジネスローンも無理のない範囲で計画的に利用するようにしましょう。