起業を果たしビジネスの本格稼働に乗り出した後も、自社の商品やサービス等の売り上げだけで事業を回していけるとは限りません。
入出金のサイクルのズレからくる資金ショートを回避するための緊急資金や、市場の需要の変化に対処するための事業転換などで資金が必要になることも多く、事業者はいつでも資金調達ができる体制を整えておくことが大切です。
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一般的な銀行融資
経営状態が良ければ一般的な銀行融資を受けることができます。
銀行も民間の事業者ですから、儲けを出す必要があるのと返済の焦げ付きリスクを考えるため、融資を願う側はそれなりの負担を求められます。
利息を載せて返さなければなりませんし、融資を受ける条件として保証人の用意を求められたり、担保物の用意を求められることがほとんどです。
保証人や担保を用意できないと融資を受けられませんし、用意できるとしても、これらの担保力の審査に時間を要すため、迅速な融資実行は望めません。
相談から審査を経て融資が実行されるまでには、概ね一か月程度は見積もる必要があるでしょう。
信用保証協会を利用した融資
保証人や担保を提供することができない事業者、あるいは創業間もなく信用がない場合は一般的な銀行融資を断られることが多くなります。
その場合、信用保証協会を利用して銀行から融資を受けることも検討できます。
全国の都道府県に設置された信用保証協会は公的な機関で、中小の事業者など一般的な融資が望めない事業者のために銀行等の金融機関に保証を提供します。
信用保証協会の保証付き融資において万一返済が焦げ付いた場合、信用保証協会が債務者に代わって代位弁済を行います。
銀行はこれで満足を得ることができ、代位弁済した分は信用保証協会から債務者に請求がなされます。
そして保証料は保険ではないため、返済を焦げ付かせた場合は債務が免除されるわけではなく、代位弁済を行った信用保証協会に引き続き返済の義務が残ることに注意が必要です。
また信用保証協会の保証が付くからといって銀行が必ず融資に応じるとは限らず、融資が可能かどうかの審査は銀行と信用保証協会の双方で行われるためかなり時間がかかります。
迅速性が求められるケースでは利用しにくい
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫も公的な機関ですが、こちらは保証を与えるのではなく公庫自らが貸し付けを行います。
銀行の一般的な融資よりも金利が低く、保証人や担保が無くても利用できるように体力のない中小の事業者に配慮した特別な融資施策を用意しています。
①新創業融資制度
新たに事業を始める人だけでなく、事業開始後税務申告を2期終えていない事業者も利用可能です。
融資限度額は最大3000万円、そのうち運転資金は1500万円まで。
事業開始後に必要となる設備資金や運転資金として利用可能です。
②マル経融資
商工会や商工会議所の経営指導を受けている場合に利用できるのがマル経融資で、無担保、保証人なしで最大2000万円の融資を受けられます。
利用したい場合は商工会議所や商工会からの推薦が必要なため、まずは商工会等に加入し、これを経由してマル経融資の利用を相談することになります。
日本政策金融公庫は公的機関であるため民間の銀行と比べると使い勝手は良いとは言えず、細かい条件をクリアしなければならなかったり、審査にもかなり時間がかかるというデメリットがあります。
ベンチャーキャピタルの支援を受ける
事業内容に将来性があり、投資することによって大きな恩恵を受けられそうであれば、ベンチャーキャピタルからの資金援助を受けることも可能です。
ベンチャーキャピタルは将来有望な事業に投資し、資金を援助する他に経営面でのコンサルティングを施して投資先の価値を高めてくれます。
支援を受けるためのハードルはかなり高いですが、ベンチャーキャピタルが企画する経営コンテストに応募したり、直接連絡をとって事業内容を説明するなどして納得を得られれば、支援を受けられるチャンスがあります。
クラウドファンディングの活用
ベンチャーキャピタルほどハードルが高くなく、自社の売り込みがしやすいものにクラウドファンディングがあります。
こちらは個別の企業ではなく、主に個人の投資家に訴求して資金支援を要請するものです。
社会に貢献する活動や一般の会社が手を出さない事業を行う事業者に対し、支援する意義があると踏んだ個人投資家が小口の支援金を支出します。
見返りとしては利益が出た場合の配当が出るもの、投資先の事業者が提供する商品やサービスを利用できるもの、また感謝状をもらえるだけといったものもあります。
どのような見返りを設定するかは事業者側が決めることができるので、どのように自社の魅力を出していくかの手腕が問われます。
クラウドファンディングで資金を得たい場合、自社独自で支援を募ることもできますが、多くの場合は当該サービスを提供するサイトに登録して情報を発信していくことになります。
ファクタリングによる資金調達
掛け取引を行う事業者で売掛債権を保有している場合、これをファクタリング業者に売却することができます。
債権の早期現金化という形で資金調達ができるファクタリングは借り入れと違い、債権の譲渡取引という性質を持ちます。
信用情報に影響が出ないなどのメリットがある反面、手数料の負担が発生し借り入れの金利と比べると金銭的な負担が大きくなることが多いです。
売掛先に知られずに利用できる二社間取引では譲渡する債権額の10%~30%、売掛先の合意を取って進める三社間取引では3%~9%程度の手数料が必要です。
親族や知人からの借金
金利や手数料の負担を避けたいなら、親族や知人にお願いすることも考えられます。
肉親や旧来からの深い友人であれば、無利子もしくは低金利でお金を貸してくれるかもしれません。
ただし親族や友人を頼る場合、一度お金が絡むとそれまでの関係が根底から変わってしまうこともあります。
きちんと返せば問題ないこともありますが、例えば見返りに何か別の要求をされるといったこともあり得ます。
肉親の場合でも、多額のお金を返せなくなり親子関係が破綻してしまう例はよく聞きます。
ビジネスローンの利用
主にノンバンクが提供するビジネスローンは、事業性融資として多くの事業者が利用しています。
メインとなるのは代表者以外の保証人や担保が不要な信用貸付けで、資金ショート回避などに活躍します。
担保の提供ができればかなりまとまった融資を受けることもでき、不動産や事業用資産などの動産、売掛債権などの債権を担保にした融資プランもあります。
ビジネスローンを提供する業者によって用意するプランが異なるので確認が必要。
金利の面では銀行の融資と比べると高めですが、ファクタリングの手数料と比較するとかなり負担は軽くなります。
実際のところ、創業間もなく信用が薄い事業者や規模の小さい中小の事業者はノンバンクのビジネスローンに助けられている所が多く、利用頻度が高いのが実情です。
まとめ
一般的な銀行融資以外にも方法は色々あり、時間的な余裕がある場合は公的な機関の融資を検討すると金利負担が抑えられます。
ただ公的な機関は融通が利かず使い勝手が悪いので、ビジネス上の要請で迅速、確実な資金調達が必要な場面ではファクタリングやビジネスローンを利用するケースが多くなると思われます。
金利面の負担も考えるとビジネスローンが有利となることが多いので、優先して考えることをお勧めします。